IRRから考える、不動産投資の落とし穴

一棟建てるぞ!と意気込んだはいいものの、都内の土地奪取競争もかなり加熱しており、なかなか良い案件を前にすすめることができず……ということで、最近は土地から新築にこだわらず、いろいろと案件を見ている。

年始、23区内築数年アパートに買い付けを入れて、1番手にはなったものの、融資付けでバタつき(実力不足)、結局業者の現金買いに契約が流れてしまった。

表面利回りは6%くらいで、利回りだけみてたらこんなの検討対象外だろ、と考えるような案件だったが、今は妙味があるなぁと考えられる。考えの基になる、IRRについて、備忘録。

IRRとは

  • 定義: NPV(Net Present Value: 将来価値(インカム+キャピタル)の割引現在価値)と初期投資額の差が0になる割引率
  • ざっくりいうと: 金利
  • 例: 100万円で買った金が5年後に200万円で売れたときのIRRは15%

IRRの便利な点

  • 表面利回りなどの不動産投資独自の指標とは違い、他の投資手法と比較ができる
  • 不動産投資の一番のメリットと言われるレバレッジを考慮できる(手出し費用を初期投資額とすれば良い)
  • 入口、運用時、出口の重要性が理解できる(安く買って、うまく回して、高く売る。特に、出口でIRRが確定するので、出口の重要性。)

IRRからわかる不動産投資の落とし穴

IRRの理解が進むと、よくある不動産投資手法の落とし穴(巧妙に隠されていることがある点)がわかる。逆にいうと、これらの点をクリアできる案件であれば良い。

高利回り築古戸建て投資の落とし穴

まず、融資がつかずにレバレッジが効かない。手出しの費用が多くなるので、IRRは低くなりがち。IRRが高くても、規模が小さい(これはIRRだけでは見れない、IRRの落とし穴)

そして、出口が不透明。よく郊外の戸建てで土地値です!という案件が回ってくるが、誰がそこに土地を買いたいの?というのはよく考えたほうがいい。まわりに新築戸建がなければ、戸建て用地としての出口はない。土地で売れなければ建物(利回り)で出口を求めるわけだが、築40年で5年保有して築45年、まだ建物は使えるだろうか。

都心新築RC投資の落とし穴

  • 表面利回りが当てにならない
  • 土地で出口は取れない

基本的に、競争過多というのが背景にある。近所をぶらぶら散歩すると、コンクリート打ちっぱなし外観の5階建てRCをよく見るようになった(探してるんだけどね)。5階建てRCが7%で立ちそうな土地は、瞬く間に消えていく。高額新築大家塾は盛況らしい。

そうなったときに、机上計算の表面利回りがいつまで続くのか、よく考える必要がある。新築プレミアムは剥がれていくし、礼金は取れない、フリーレントつけるか、AD乗せるか。空室が出たので募集してたら、近くに似たような仕様の新築マンションができる。

築10年くらいでは残債もほとんど減っておらず、建物比率も高いので、土地で出口をとったら大赤字、もともと地形がきれいじゃないことが多いし、RCは解体費も高い。そうなったときに、このエリアの、投資家が建てたRC物件を、表面利回り何%で誰が買うのか、出口のイメージがつくかどうか。

インカム・キャピタルは思ったより出ない

運用中にいくらインカムゲインがあるか、売却時にいくらキャピタルゲインがでるか、でIRRは大きくかわるが、不動産投資は思ったより(軽く案件の表面を舐める程度で考えたときより)、インカム・キャピタルは、出ない。

売上が下がる要因

空室、家賃減、礼金なし、フリーレント

不整形地、面大減価、建付減価

費用が上がる要因

売買手数料

客付け、設備修繕、大規模修繕

立ち退き費用、解体費用

税金

 

このあたり、上海摩天楼君(@S_matenrou_HD14)さんのtwitterやnoteが非常に勉強になったので、ご紹介。

完璧な案件はないけど、何が完璧じゃないか理解することが大事

利回りが安定的に高くて、運用に手間もコストもかからず、土地値が高くて出口も安心、なんて案件は一般人が買う前にどこかへ流れてしまう。

そんな青い鳥を追っててもしょうがないので、手元の案件をひたすら精査し続ける、何が良くて、何がダメなのか。

行けると思ったら、買い付けを打つ(融資の目処は先につけとく)

買えなかった物件は何が良かったのか

地主が結構なお金で建てた、容積率未消化のアパート。

表面利回りは高くなかったが、新築プレミアムは乗っていない賃料帯で、しばらく下落を想定しないでも客付けが期待できた。

しっかりしたつくりの内階段のアパートで、ほぼ新築なので修繕・設備費用がしばらくかからなそう。

そして、容積率を使いきれておらず、将来的にはアパート用地としての売却や建て替えによる利回りアップが出口として見えていたというのが最大のポイント。

 

買えなかった、青い鳥……🐦️

引き続き、精進します(了)